アルツハイマー病評価のための血漿pTau217免疫アッセイの臨床的価値
この研究では、血漿中のリン酸化tauタンパク質(p-tau)217と181の軽度認知症患者への臨床的価値を探った。軽度認知症はアルツハイマー病(AD)の前駆段階であり、早期検出と病状の進行監視は疾患管理にとって極めて重要である。
研究背景:
アルツハイマー病患者の体内ではβ-アミロイドタンパク質(Aβ)の沈着とtauタンパク質の病理的変化が生じ、次第に認知機能が損なわれる。これらのバイオマーカーの検査は、疾患の進行を診断し、予測するのに役立つ。最近の研究では、血漿p-tau217がp-tau181よりも、ADの優れたバイオマーカーになる可能性が示された。しかし、これを臨床に適用するには、前向きなコホートでその性能を確認し、潜在的な影響因子を評価する必要がある。
研究過程:
本研究は、フランスのBALTAZAR(Biomarker of Amyloid peptide and Alzheimer’s disease risk)多施設コホートから軽度認知症患者473人(平均年齢77.7歳)を3年間フォローした。QuanterixとAlzPath のSIMOA検出技術を用いて、患者の血漿p-tau181とp-tau217レベルを測定。患者は脳脊髄液Aβ42/40比に基づいてAβ陽性(脳内にAβの沈着がある)と陰性のグループに分類。アルツハイマー病への転換を追跡し、体内の他のバイオマーカーがp-tauにどのような影響を与えるかを評価した。
主な研究結果: 1. Aβ陽性のグループ(55%)のp-tau217と181レベルは、それぞれ陰性のグループに比べて2.7倍と1.5倍高かった。 2. ADに転化した患者は、p-tau217と181のレベルがそれぞれ未転化のグループに比べて70%と30%高かった。 3. Aβ陽性の判断に用いられるROC曲線の下面積は、p-tau217(0.914)がp-tau181(0.783)よりも有意に高かった。 4. ADに転換する予測におけるROC曲線の下面積でも、p-tau217(0.746)はp-tau181(0.677)よりも若干高かった。 5. Coxの危険モデルでは、p-tau217(ハザードレシオ8.30)はp-tau181(ハザードレシオ1.38)よりも、ADへの転換を予測する能力が高かった。 6. 血漿p-tau217は年齢、APOEε4、