中国の骨関節炎および健康な集団における膝の冠状面アライメント分布の分類:後ろ向き横断観察研究

中国における骨関節症と健常人集団の膝関節冠状面アライメントの分類分布に関する後ろ向き横断研究

研究背景

膝関節の中立的機械的冠状面アライメント(MA)は、成功かつ永続的全膝関節置換術(Total Knee Arthroplasty、TKA)の基盤と考えられています。しかし、「先天性内反膝」の存在は、これらの場合には中立アライメントを回復することが実際には非生理的で望ましくない可能性があり、通常は何らかの内側軟部組織解放が必要であることを示しています。したがって、TKAにおいて生理的アライメントではなく中立アライメントを回復することに膝外科医の関心が高まっています。運動学的アライメント(Kinematic Alignment、KA)は、大腿骨および脛骨コンポーネントの関節面を膝関節の正常または術前の関節線に合わせることを目指しています。ナビゲーションまたはロボット支援システムの発展に伴い、KAから制限付きKA、リバースKA、機能的KAなどが派生し、先天的アライメントと機械的アライメントの安全領域の両方を妥協点として発展してきました[1]。

論文の出典

本論文の著者には、Yu-Hang Gao、Yu-Meng Qi、Pei-Hong Huang、Xing-Yu Zhao、Xin Qiらが含まれ、主に吉林大学第一病院整形外科センターに所属しています。本論文は2024年2月13日発行の「国際外科雑誌」(International Journal of Surgery)に掲載されました。

研究の手順

本研究では、246例の骨関節症(OA)患者(477膝)と107名の健常者(214膝)の全脚X線写真を後ろ向きに検討し、膝関節冠状面アラインメント(CPAK)分類の分布を分析しました。具体的な研究手順は次のとおりです。

  1. 研究対象と研究デザイン

    • OA群: 2021年8月から2023年7月までの期間に、1人の上級外科医によって初回TKAを受けたOA患者の連続データを後ろ向きに分析しました。27例を除外した後、246例(単側15例、両側231例、合計477膝)が研究に含まれました。
    • 健常群: 2023年1月から2023年7月までの期間に、同機関の外来で全脚X線検査を受け、軟骨変性の徴候や下肢疾患の既往のない連続受診者のデータを分析しました。29名を除外した後、107名(214膝)が研究に含まれました。
  2. 画像計測

    • すべての参加者に対して、標準的なデジタル全脚X線検査を実施し、大腿骨および脛骨の機械的軸角度(MHKA)、大腿骨遠位外側角(LDFA)、脛骨近位内側角(MPTA)、および関節線交差角(JLCA)を測定しました。
    • CPAKは、AHKAとJLOから計算され、患者を9つの可能なCPAK位置合わせグループに割り当てられました。
  3. データ解析

    • OA群と健常群の年齢、性別、画像計測結果、およびCPAK分類を比較しました。独立サンプルのt検定と対応のあるt検定を使ってデータを解析しました。カテゴリデータの比較にはPearsonのカイ二乗検定を使用しました。

主な研究結果

  1. 最も一般的な分布

    • OA群では、最も一般的なCPAK分類はタイプIで43.6%でした。一方、健常群では、タイプIIが44.9%で最も一般的でした。
  2. 異なるKellgren-Lawrence分類における画像計測とCPAK分類

    • 単側TKAの患者では、Kellgren-Lawrence 3-4度の膝関節で最も一般的な分布はタイプIでした。一方、対側のKellgren-Lawrence 0-2度の膝関節では、最も一般的な分布はタイプIとタイプIIでした。
  3. 異なる冠状面アライメント戦略の患者の臨床成績

    • CPAKタイプIのOA患者では、機械的アライメントと制限された運動アライメントのグループ間で、術後3ヶ月の臨床成績に有意差はありませんでした。

研究の結論

本研究では、中国の骨関節症患者と健常者において、最も一般的なCPAK分類はそれぞれタイプIとタイプIIであることが明らかになりました。さらに、関節症の進行はCPAK分類の変化をもたらす可能性があります。これは、個別化された膝関節置換術の設計と実施にとって重要な臨床的指針となります。

研究の優れた点

  1. 重要な発見

    • OAと健常者におけるCPAK分類の違いは、OAの進行がCPAK分類に影響を及ぼすことを示唆しています。
  2. 新規性

    • AHKAやJLOなどの画像パラメータを用いて関節アライメントを測定する方法を導入し、健常と病的状態での分布の違いを検証しました。
  3. 臨床的意義

    • 研究結果は、TKA手術における冠状面アライメント戦略の選択に指針を与え、術後の回復促進に実用的な価値があります。