臨床ゲノム検査における偶発的所見の評価および報告のためのフレームワーク
臨床遺伝子検査における偶発的所見の評価と報告のフレームワーク
研究背景
現在の臨床実践において、全ゲノムシーケンシング(clinical genome sequencing, CGS)は稀少な遺伝性疾患の診断における重要な手段となりつつあります。しかし、ゲノムシーケンシングでは、検査目的とは無関係な予期せぬ結果である偶発的所見(incidental findings, IFs)がしばしば発生します。IFsの返却を指導する一般的に受け入れられたガイドラインが不足しているため、IFsの報告方針はまちまちで透明性に欠けています。そのため、研究者たちはCGSプロセスで遭遇するIFsの評価と返却を指導するための新しいフレームワークを開発しました。このフレームワークはIFsの臨床的意義と実行可能性に焦点を当て、IFsを返却するかどうかを推奨するための段階的アプローチと中止点を提案しています。
論文の出典
本論文はCarolyn M. Brown、Laura M. Amendola、Anjana Chandrasekharなど複数の研究者によって共同で完成され、彼らはCAP認定とCLIA認証を受けた臨床検査室であるIllumina Laboratory Services (ILS), San Diegoに所属しています。論文は「European Journal of Human Genetics」に掲載され、2024年に発表され、2024年4月2日にオンラインで公開されました。
研究プロセス
フレームワークの開発
まず、2名の臨床ゲノム科学者、2名の遺伝カウンセラー、1名の検査室ディレクターからなる内部ワーキンググループが結成され、このグループのメンバーは2019年から毎週会合を持ちました。協力臨床医を対象に、IFsに対する彼らの見解を評価するための調査が行われました。調査結果と文献レビュー、専門組織の推奨に基づいて、臨床的意義と実行可能性の閾値が決定されました。また、フレームワークのプロトタイプを以前のワークフロー決定と比較することで、報告決定の臨床的妥当性を確保しました。
CGS検査
研究者たちは収集されたDNAサンプルにCGSを実施し、Illuminaシーケンシング技術を使用して次世代シーケンシングを行いました。データ処理には、リードのアライメント、変異検出、アノテーション、包括的な変異フィルタリングが含まれます。この検査では一塩基多型(SNVs)、小規模な挿入と欠失、コピー数変異(CNVs)などを検出することができます。
結果
2021年1月から2022年6月の期間に、720名の患者がCGSを受けました。この期間中、37名の患者から38件のIFsが返却され、19の独自の遺伝子をカバーしていました。これらのIFsに関連する最も一般的な疾患タイプには、血液疾患、がん素因、心臓病、腎臓病などが含まれていました。フレームワークの実施により、約5.1%の患者に実行可能なIFsが返却されました。グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)欠損を除外すると、この割合は3.1%に低下しました。
研究結論
このフレームワークの実施により、臨床報告におけるIFsの一貫性と透明性がもたらされ、ゲノム分野の重要なニーズに対応し、IFsの標準化された評価と報告のモデルとなりました。
研究のハイライト
この研究のハイライトには以下が含まれます:提案されたフレームワークが報告決定の一貫性を向上させたこと;フレームワークの遺伝子非依存的アプローチが、異なる患者集団間でIFsの種類を特定し返却する平等性を高める可能性があること;また、このフレームワークが他のグループのIF返却決定と一致し、文献で報告されている多くの遺伝子や、ACMGが後に医療的に実行可能な遺伝子リストに含めた遺伝子について実行可能であること。
研究の限界
本研究の限界は、25%未満の回答率に基づいているため、提供者が報告したIFsの返却に対する選好が代表的でない可能性があることです。さらに、スプリント遺伝子に関連する情報の表現が制限される可能性があります。