パーキンソン病に対する段階的な両側MRIガイド下集束超音波視床下核切除術

MRI による段階的焦点超音波両側視床下核切除術でパーキンソン病を治療

背景紹介

パーキンソン病(Parkinson’s Disease, PD)は一般的な神経変性疾患で、震え、硬直、運動緩慢などの運動症状が主に現れる。伝統的な治療法として、薬物療法および外科手術があり、後者には深部脳刺激術(Deep Brain Stimulation, DBS)や放射周波外科手術も含まれ、これらも進化を続けている。しかし、片側のMRIガイド下での焦点超音波視床下核切開術(FUS-STN)は、非対称性のパーキンソン病患者の対側における運動特性を改善することが証明されているが、両側FUS-STNの実現可能性はまだ検討されていない。片側治療では全体的な症状の制御ができず、特に進行途中の未治療の側の身体に運動の悪化や歩行障害のような軸性表現が現れる可能性がある。これを踏まえ、本研究は段階的両側FUS-STNによるパーキンソン病の安全性と有効性を評価することを目指す。

出典紹介

本研究論文の著者にはRaúl Martínez-Fernándezらが含まれ、研究はHM-CINAC、Puerta del Sur大学病院と複数のスペイン研究機関が共同で行い、論文は2024年5月13日にJAMA Neurologyに掲載された。

研究設計と方法

本研究は前向き、オープンラベルのケースシリーズ研究であり、以前に片側FUS-STNを受けた6名のパーキンソン病患者を対象としている。これらの患者では未治療の側の体の症状が悪化し、薬物治療では理想的な制御ができなかった。研究は2019年6月18日から2023年11月7日の間にスペインのマドリッドにあるHM-CINACとPuerta del Sur大学病院で実施された。

研究の流れ

  1. 患者のスクリーニング: 45名の片側FUS-STN治療を受けた患者の中から、条件を満たす6名が選ばれた。スクリーニング基準には、未治療の体側の症状悪化と薬物での制御が不可能な患者が含まれている。

  2. 治療プロセス: 研究において、各患者は2回のFUS-STN治療を受け、その間隔は3.2年(IQR, 1.9-3.5年)であった。患者は初回治療完了後少なくとも6ヶ月で2回目のFUS-STNを受けた。

  3. 評価方法: 2回目の治療後の1、3、6、12および24ヶ月に患者を追跡し、主要評価指標は安全性(2回目の治療後の不良事象)と薬を中止した状態での運動変化(MDS-UPDRS IIIスコア)とした。副次的な評価指標には薬物使用下での運動変化、運動合併症(MDS-UPDRS IV)、日常生活活動能力(MDS-UPDRS I-II)、生活の質(39項目パーキンソン病質問票)が含まれる。

データ分析

データ分析はJASP 0.16.4.0版ソフトウェアを使用し、連続変数の臨床結果を中央値と四分位範囲で表示し、Friedman検定とConover検定で逐次比較を行い、有意水準はp<0.05とした。

研究結果

安全性の評価

2回目のFUS-STN治療後、4名の患者に反対側の舞踏様不随意運動が現れ、3ヶ月以内に自然に軽減した。4名の患者には言語障害が現れ、そのうち2名では6ヶ月で症状が続いた。1名の患者は治療後1週間以内に軽度のバランス障害と嚥下困難が現れ、3ヶ月で症状が消失した。認知テストでは、行動や認知の障害は見られなかった。

有効性の評価

薬を中止した状態で、MDS-UPDRS IIIスコアは2回目のFUS-STN治療の6ヶ月後に基線に比べて52.6%改善した(37.5から20.5に、p=0.03),反対側治療部分は64.3%改善(17.0から5.5に、p=0.02)。患者が自己評価した全体的な改善印象スコアは全て肯定的であった。

副次的な結果として、薬物使用下での運動スコアにも顕著な改善が見られたが、生活の質スコアと日常生活活動能力は改善が見られたものの顕著ではなかった。日常のレボドパ等価用量は6ヶ月後に減少したが、統計的有意性には達しなかった。

討論と結論

本研究は段階的両側FUS-STN治療がパーキンソン病に対して安全かつ有効であることを初めて証明した。軽度ながら言語関連の不良事件があったものの、全体的な運動改善効果は顕著であり、全ての患者が明確な全体的改善を報告した。これにより、両側FUS-STN治療はパーキンソン病の運動特性改善のための実現可能かつ安全な選択肢である可能性が示唆された。

さらなる技術の最適化と経験の蓄積が必要であり、DBSなど他の治療法との比較を行うことで、パーキンソン病治療における両側FUS-STNの役割をより明確にし、最適な患者群を特定する必要がある。

研究の意義

本研究は、両側FUS-STN治療がパーキンソン病に有効であることを初めて示す第一線の証拠を提供し、将来的な大規模な臨床試験や治療指針の基盤を築くものであり、重要な科学的および臨床的応用価値を有している。