全頭皮下EEGを用いた微侵襲電極挿入の実現可能性、安全性、および性能
全頭頂下EEGの実現可能性、安全性、および性能 - 最小侵襲的電極埋め込みに関する研究報告
背景と目的
1929年にBergerが人間の頭皮の電気信号を最初に記録し、αリズムを発見して以来、脳波(EEG)の記録能力は、空間的なカバー範囲(電極数の増加)、時間的な長さ(数日間)、およびデジタル化の面で大幅に改善されてきました。従来の頭皮EEGは、てんかんや睡眠障害などの一過性の神経機能障害を診断する標準的な方法ですが、現在の臨床実践では、従来のEEGでは短期間(日単位)の記録しかできず、脳の(機能的)変化をより長期間(月単位)にわたって捉えることができません。慢性脳疾患(てんかんなど)の管理を最適化するためには、日常生活中の脳活動を監視する方法を見つける必要があります。
本研究の目的は、全頭頂下EEG(Epios)の記録が可能なデバイスを開発し、最小侵襲的技術による電極線の安全な挿入の実現可能性(主な結果)を検証することです。副次的な結果として、皮下EEGが生理的な脳振動と病的な放電の測定において従来の頭皮EEGと同等の性能を持つことが検証されています。
出典と発表情報
本研究はEllen van Maren、Sigurd L. Alnes、Janir Ramos Da Cruzらの博士や医学博士らによって実施され、主な関係機関はスイスのベルン大学病院およびインセルスピタル、ジュネーブのWyss Center for Bio and Neuroengineeringなどの大学や研究センターです。論文は「Neurology®」誌に掲載され、号数はNeurology® 2024;102:e209428、発行日は2024年6月です。
研究プロセス
研究対象と方法
研究対象は、薬物治療が難しいてんかんの治療のため頭蓋内EEGを受ける8名の参加者で、同じ手術中にカスタムツールを使って頭皮と頭蓋骨の間に皮下電極を挿入しました。術後9日間にわたって入院病棟で安全性を監視し、睡眠-覚醒期間、発作期間、および間欠期間のEEG信号を比較するために、窓関数多重コーン変換と周波数一貫性を用いて定量化しました。皮下EEGと頭皮EEGの一致性はBland-Altman分析で評価し、級内相関係数(ICC)を計算しました。
実践と実験手順
- 電極植え込みと初期安全性監視: 手術中に最小侵襲技術を使って最大28個の皮下電極を1cmの切開部から挿入し、標準的な術後安全性監視を行いました。
- 信号記録と比較: 術後に得られたEEG信号は従来の頭皮EEGと多層的に比較・分析されました。これには、生理的脳波(α波、δ波、σ波、β波など)および病的放電が含まれます。
結果
安全性
最小侵襲的に挿入された電極は、最長9日間にわたって重大な有害事象を引き起こしませんでした。手術関連の術後有害事象が5件発生しましたが、重大なものはなく解決されました。
生理的信号の記録
皮下電極は、メンテナンス不要の継続的なEEG記録を提供でき、ピークα波パワーと一致性評価において非劣性(ICC>0.8、バイアスなし)を示しました。
病理的信号の記録
皮下電極は頭皮電極と同様に、異常放電やてんかん発作の信号を記録でき、脳領域への伝播のロケーションとモニタリングが高い一致性で行えました。
データ解析とデバイスの性能
級内相関係数(ICC)とBland-Altman分析により、皮下電極と頭皮電極が脳波信号の測定において高い一致性を示すことが確認されました。一部の参加者の術後CTと術前MRIの整合により、電極の挿入位置が予想通りであることが確認され、デバイスと技術の初期的な安全性が裏付けられました。
研究に関する考察
研究の価値
本研究は、全頭皮カバー型の皮下EEGシステム(Epios)が最小侵襲手術で安全に植え込まれ、高品質の電気信号記録を最長9日間行えることを初めて実証しました。その性能は、生理的および病理的脳波信号の記録において従来の頭皮EEGと同等であり、全頭部をカバーするという利点を持っていることが検証されました。したがって、慢性脳疾患の監視に適用できます。
臨床と研究への応用の展望
既存の頭蓋内デバイスと比べて、Epiosシステムはより広範な脳信号をカバーできるため、発作領域を事前に知る必要がなく、監視が可能です。てんかん患者の長期モニタリングに特に適しており、異常放電の検出と位置特定、薬物治療の最適化の能力が向上し、同時に手術前の計画にも多くのデータが提供されます。
研究の主な特長
- 技術革新: 小さな切開部から皮下植え込みができる、全く新しい設計の3叉状電極を提案しています。
- 科学的な研究方法: 厳格な実験方法と多層的なデータ解析を用いて、デバイスの安全性と性能を検証しています。
- 臨床応用の可能性: 現在のてんかん及びその他の脳疾患のモニタリング方法を変える可能性を秘め、院外長期モニタリングが可能です。
本研究は、革新的な設計と綿密な検証方法によって、全頭部をカバーする皮下EEG記録システムの臨床および研究応用における確かな基礎を築きました。