EDA2Rは全脳照射に対する急性脳反応を反映する

放射線治療後、EDA2Rはリキッドバイオプシーにおいて上昇し、脳の急性損傷を反映する

背景

画像の要約 頭蓋内放射線治療は進行性の脳腫瘍や転移性病変の標準的な治療法であるが、特に小児がん生存者において、憂慮すべき神経認知機能障害をもたらす。小児脳腫瘍生存者が増加しつつある中、生涯にわたる神経認知的な合併症に苦しむ患者が増えることが予想される。しかしながら、放射線治療終了時に放射線による脳損傷の程度を評価し、予想される神経認知的合併症の重症度を予測するための確立された生物学的マーカーは存在しない。

研究機関と著者

本研究は、スウェーデンのカロリンスカ研究所婦人と子供の健康部門のAlejandro Lastra Romero、Thea Seitz、Georgios Alkis Zisiadis、Holli Jeffery、Ahmed M. Osmanによって行われた。

研究方法とプロセス

a) 研究の流れ: 本研究では、若年マウスを用いた全脳照射モデルを採用した。マウスには0.5、1、2、4、8グレイ(Gy)の線量で全脳照射を行い、急性期(6時間後)、亜急性期(2週間後)、亜慢性期(6週間後)において脳脊髄液、血漿、脳組織サンプルを収集し、プロテオミクスのスクリーニング、分子および組織学的解析を行った。

b) 主な研究結果: 腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバーであるEDA2R(ectodysplasin A2 receptor)が、放射線照射後の脳脊髄液と脳組織において顕著に上昇することが判明した。この上昇は低線量でも見られた。EDA2Rは急性期に全脳で発現が上昇し、その後徐々に低下した。EDA2Rは主に神経細胞によって発現しており、脳組織内での時間的動態は血漿サンプルにも反映されていた。

c) 研究の結論: 研究者らは、EDA2Rがリキッドバイオプシーにおいて放射線による脳損傷を反映する潜在的なバイオマーカーとなり得ると提案した。放射線治療終了時のEDA2Rのレベルは、放射線による神経認知的合併症の重症度を非常に早期に予測する手がかりとなる可能性がある。

研究の意義と新規性

本前臨床研究は、全脳照射後のEDA2Rの時空間的発現パターンと、これらの分子イベントが体液(脳脊髄液と血漿)におけるダイナミクスを、生体内モデルで初めて記述した。EDA2Rが放射線誘発急性脳反応を評価する潜在的バイオマーカーであることを確認した。

この発見は、重要な臨床転化の意義を持つ。なぜなら、現在のところ、放射線治療終了時に放射線による脳損傷の程度を評価し、予想される神経認知的合併症を予測できる確立された生物学的マーカーは存在しないからである。もし臨床サンプルで検証されれば、放射線治療後のEDA2R測定は、小児の放射線治療後の神経認知障害の重症度を予測し、予防または治療措置を臨床的に導入するのに役立つだろう。

総じて、本研究では、頭蓋内放射線照射による急性脳損傷を反映する新しいリキッドバイオプシーバイオマーカーを発見した。この発見は、小児の放射線治療による合併症を軽減する新たな機会を提供するものである。