初めての近赤外線ウィンドウIIA/IIB蛍光イメージングによる神経膠腫の精密外科的切除の臨床研究

近赤外ウィンドウIIA/IIB蛍光イメージングによる神経膠腫手術の臨床研究

《IEEE生物医学工学会誌》2022年8月、第69巻、第8号、初めての臨床研究:近赤外ウィンドウIIA/IIB蛍光イメージングによる神経膠腫精密手術における応用

曹彩光、金泽萍、史晓菁、张哲、肖安琪、杨君英、计楠、田捷(IEEE会員)、胡振华(IEEE高級会員)

導入

生物医学研究の分野では、蛍光イメージングの高い感度、高い空間解像度、リアルタイムイメージング能力、および操作の利便性が広く注目されています。本研究は、近赤外ウィンドウII(NIR-II、1000-1700ナノメートル)イメージング技術の臨床応用における価値を探索し、神経膠腫手術中の腫瘍の切除に役立てることを目的としています。著者らは、新たに開発したイメージング装置と術中画像融合方法を組み合わせることで手術の正確性を高め、術中の出血量を減らし、腫瘍を最大限に切除することを目指しています。

出処

本研究は、曹彩光、金泽萍、史晓菁、张哲、肖安琪、杨君英、计楠、田捷、胡振华によって行われました。彼らはそれぞれ、中国科学院自動化研究所分子イメージング重点実験室、北京市分子イメージング重点実験室、国家複雑システム管理制御重点実験室、北京天壇病院神経外科、北京神経疾患国家臨床研究センターなどに所属しています。研究成果は2022年1月19日に発行された《IEEE生物医学工学会誌》に掲載されました。

研究プロセスの詳細な説明

研究では、NIR-I/II/IIA/IIB蛍光イメージングを統合した多スペクトル蛍光イメージング装置を設計し、対応する術中画像融合方法を開発しました。III/IV級神経膠腫を患う7名の患者が本研究に参加し、研究の前期には強化型磁気共鳴イメージング(MRI)で患者の予診断分析を行いました。

a) イメージング装置と術中画像融合方法の開発

研究チームは、多スペクトルイメージング装置子システムを設計および製造しました。システムには2台の蛍光カメラが含まれ、一台はNIR-Iイメージング用、もう一台はNIR-II/IIA/IIBイメージング用です。また、近赤外光照明を提供するために808ナノメートルのレーザーと対応する励起装置を装備しています。チームはさらに、術中に得られた画像を迅速に融合する方法を開発しました。この方法では、最初に事前に訓練されたU-netネットワークを使用して血管の蛍光画像から背景を除去し、次にキャニーアルゴリズムを使用してセグメント結果を修正し、正確な血管画像を得ることができます。

b) 患者募集と特徴

18歳から75歳までのIII/IV級神経膠腫の患者7名が募集されました。手術の48時間前に静脈注射で患者にICG(インドシアニングリーン)を投与し、蛍光イメージングを行いました。その後、手術中に腫瘍部位の多スペクトル蛍光画像を取得し、開発した画像融合方法を使用して血管と腫瘍の蛍光画像を融合し、手術を指導しました。

c) 臨床プロトコル

手術前1週間に患者に強化MRI検査を行い、次にICGを注射しました。手術中には、まず腫瘍部位の異なるスペクトル下の蛍光画像を取得し、次に静脈注射でICGの血管内流れを捕捉し、最後に画像融合を行い、融合画像に基づいて腫瘍を切除しました。

d) 蛍光画像と統計分析

ImageJソフトウェアを使用して蛍光強度を抽出し、ガウスフィット法を用いて対応する血管の見かけの幅を計算し、信号対雑音比(SBR)を定義して血管の蛍光と背景のコントラストを定量化しました。

研究の主な結果

多スペクトルイメージング技術を通じて、臨床手術における神経膠腫の切除に成功裏に応用され、高分解能と高コントラストのイメージング効果が得られました。対照群と比較して、患者の手術中の出血量は有意に減少しました。研究結果は、NIR-IIA/IIBイメージングが臨床で素晴らしい応用前景を持つことを示し、特に手術の正確性を高め、出血量を減少させる点で重要な意義を持っています。

研究の意義と価値

本研究の科学的価値は、NIR-IIA/IIBイメージング技術を初めて臨床手術に適用し、神経膠腫の正確な切除における優位性を証明したことにあります。本研究の応用価値は、神経膠腫手術中の出血量を大幅に減少させ、腫瘍を最大限に切除できる点にあり、将来の関連する血管手術の参考となるものです。

研究のハイライト

  • 初めてNIR-IIA/IIBイメージング技術を人間の臨床研究に適用。
  • NIR-I/II/IIA/IIB蛍光イメージングを統合した多スペクトルイメージング装置を開発。
  • 術中に得られた蛍光画像を迅速かつ正確に融合する方法を開発。
  • 神経膠腫の正確な切除において重要な科学的価値と臨床応用の可能性を示しました。