CT画像における内部動脈を組み合わせた新しい層別化スキームによる肝細胞癌の術後補助経動脈化学塞栓術の指導: 遡及的コホート研究

肝細胞癌術後併用CTイメージングの革新的層別化方式は、術後補助的な肝動脈化学塞栓療法のための回顧的コホート研究を導く

背景紹介

肝細胞癌(Hepatocellular Carcinoma、HCC)は世界で6番目に一般的ながんであり、がん関連死亡の第4位の原因でもあります。HCCに対して、肝切除術は主な治療法であり、特に早期段階では重要ですが、術後5年以内の再発率は50~75%と高い水準にあります。これまでの研究で、術後補助的な肝動脈化学塞栓療法(Postoperative Adjuvant Transarterial Chemoembolization、PA-TACE)が、一部のHCC患者の長期生存期間を延長し、腫瘍の再発率を低下させることが示されています。しかし、PA-TACEの治療効果については議論があり、一部の研究では効果が実証されていないため、適切な患者を選択することが喫緊の課題となっています。

微小血管浸潤(Microvascular Invasion、MVI)、腫瘍径が5cm以上、多結節性疾患などのハイリスク患者がPA-TACEの恩恵を受ける可能性があると考えられていますが、現時点で統一された基準はありません。PA-TACEの治療効果を予測する既存の手法では、追加の検査ステップが必要となり、患者の経済的負担と医師の業務負担が増加します。造影CT(Contrast-Enhanced Computed Tomography)とMRI(磁気共鳴画像)は、HCCの診断に優れた画像検査法と見なされています。そこで本研究では、画像所見がPA-TACEから恩恵を受ける患者の同定に役立つ可能性を想定し、PA-TACEの治療指針としてCT画像に基づく新しい層別化方式を提案しています。

研究目的と方法

本研究は、広東省人民医院(Southern Medical University)と中山大学癌症センターの専門家チームによって実施され、その成果は2024年2月21日にInternational Journal of Surgeryにオンライン掲載されました。

本研究では、中山大学癌症センターと南方医科大学珠江病院で肝切除術を受けたHCC患者のデータを後ろ向きに分析しました。CT画像の所見に基づき、PA-TACEの治療を導くための新しい層別化方式が策定されました。2012年1月から2020年12月の症例データが選択され、術前治療、術中・術後死亡、画像の偽陰影などの除外基準が設けられました。

研究の手順と方法

研究は次のようなステップで進められました:

  1. 患者の選別と組入れ基準: 適格患者は手術前1ヶ月以内にCT検査を受け、病理検査でHCCと確定されていました。過去の腫瘍治療歴、主要血栓や転移の有無、画像上の偽陰影などが除外基準とされました。

  2. データ分析と統計手法: 逆確率治療加重(IPTW)によりベースライン特性の差を調整し、Cox比例ハザードモデルを用いてPA-TACE、画像所見、病理指標の相互作用を分析しました。森林プロット、ファンネルプロットなどの可視化ツールでデータを表し、交互作用のp値<0.10を有意とみなしました。

  3. 画像分析: 各HCCケースについて、腫瘍径、結節数、内部動脈の有無などの画像所見を評価し、画像と病理所見を総合してHCC画像・病理分類(HCC Imaging and Pathological Classification、HIPC)方式を構築しました。

主な研究結果

  1. 患者特性と生存分析: 1488例の患者(平均年齢52歳)が登録され、中央値6年の追跡調査が行われました。IPTWで調整後、全てのベースライン特性の差は0.1以下となりました。全体としてPA-TACE群で無病生存期間(RFS)が長く、全生存期間(OS)は類似していました。

  2. サブグループと交互作用分析: MVIが陽性の患者はPA-TACE後に有意な恩恵を示しました(HR 0.656)が、陰性患者では有意な恩恵は見られませんでした。内部動脈(Internal Arteries、IA)陽性患者もRFSとOSで有意な恩恵を示しました。IAを元の層別化に追加することで、PA-TACEの効果予測がさらに細分化されました。

  3. HIPCスキームの検証: 画像と病理所見を統合したHIPCスキームにより、患者を3群(HIPC1低リスク、HIPC2中等リスク、HIPC3高リスク)に分類しました。従来の術後推奨と比較して、新方式では約36.5%のPA-TACE治療が避けられ、不必要な副作用を回避できます。

  4. 臨床的意義と重要性: HIPCスキームは画像学的観点からPA-TACEの治療指針を提供するだけでなく、不必要な治療を減らし、臨床判断の精度を高めます。

結論と意義

本研究により、内部動脈の存在がPA-TACEの効果を予測する重要な画像生物マーカーであることが示されました。さらに、CT画像と病理所見を統合したPA-TACE指針層別化方式(HIPC)が提案されました。本スキームにより、術前に画像所見で個別化された患者選択が可能となり、術後補助療法の精度が向上します。今後、HCC患者のPA-TACE治療指針としての本スキームの活用が期待され、新たな画像所見と臨床決断の関連性がさらに探求されることが推奨されます。