乳がん患者の長期フォローアップ中の術後循環腫瘍DNA評価の予後価値
科学研究報告
背景紹介
乳がんは、世界中で男女ともに最もよく診断されるがんであり、女性のがん関連死亡の主要な原因です。早期乳がんの標準治療法は通常、手術と(新)補助化学療法および/または内分泌療法を含み、その目的は顕微鏡的最小残存病変(Minimal Residual Disease, MRD)を排除することです。しかし、初期治療後に再発し、生命を脅かす転移が見られる乳がん患者は30%に上ります。そのため、MRDを検出し、乳がん初期治療後の患者フォローアップにおいて、早期介入が予後を改善する可能性があるかどうかを特定するために、より感度の高い技術の開発が急務です。
個別化循環腫瘍DNA(ctDNA)検査は、肺がんと結腸がんの再発を予測する有望な技術とされています。乳がん患者においても、複数の研究がctDNA検査が臨床的または画像診断による再発よりも早期に転移再発を予測できることを示しています。本研究は、長期間のフォローアップにおける個別化、腫瘍情報を加味したctDNA検査の予後価値を評価することを目的としています。
論文の出典
この研究論文はJacqueline A. Shaw博士とそのチームによって執筆され、American Society of Clinical Oncologyにより《JCO Precision Oncology》誌に2024年5月1日に発表されました。論文のDOIはhttps://doi.org/10.1200/po.23.00456です。
研究のプロセスと方法展開
研究対象とサンプル
この研究は多施設、前向きコホート研究であり、Cancer Research UKおよびNIHRの資金援助を受けています。研究対象は手術と補助化学療法を受けた原発性乳がん患者で、合計188名の患者が登録されました。患者の年齢は18歳以上で、病理診断による乳がんと確定されており、研究開始時点で全ての手術および化学療法を完了している必要がありました。最終的に156名の患者が含まれ、彼らが提供した1,136の血漿サンプルがctDNA検査に使用されました。
実験設計と分析
個別化されたSignatera ctDNA検査は、原発腫瘍の全エクソンシーケンシング(whole-exome sequencing, WES)データから開発され、血漿中のctDNAを検出するために16個の高度クローン性体細胞単一ヌクレオチド変異(SNV)をターゲットとしています。すべてのテストはCLIA認定の実験室で行われました。
臨床フォローアップとctDNA検査
12年間のフォローアップ期間中、これらの患者は半年ごとに血液サンプルを提供し、これらのサンプルは超深度シーケンシング技術で分析され、残存病変が検出されました。各患者にカスタマイズされた個別化Signatera ctDNA検査では、臨床または画像診断による再発前に30例の病変再発が検出され(患者の88.2%の感度)、再発を最大38ヶ月(中央値10.5ヶ月)早期に予測しました。
主な結果
分子再発検出と臨床再発との関連性
34名の再発患者のうち、Signatera ctDNA検査で30名の患者にctDNAが検出され、感度は88.2%でした。再発予測時間範囲は0から38か月であり、中央値は10.5ヶ月でした。再発の全ての三陰性乳がん患者(n = 7/23)は、再発前8ヶ月(範囲0-19ヶ月)にctDNA陽性と判定され、再発しなかった16人の三陰性乳がん患者は、58ヶ月の中央値フォローアップ期間中(範囲8-99ヶ月)、ctDNA陰性を保持して