10代のカロリー摂取に人間の概日リズムと睡眠/摂食サイクルの独立した影響があります
青少年の体重状態によるカロリー摂取への概日リズムと行動周期の影響
学術的背景
肥満問題は世界的に悪化し続けており、特に青少年における肥満率の上昇は、2型糖尿病、高血圧、心血管疾患などの慢性疾患リスクを引き起こしています。これまでの研究では、夜遅くの食事が肥満リスクの増加に関連していることが示されていますが、内因性の概日リズムシステムがカロリー摂取に独立して影響を与えるかどうか、またその影響が体重状態によって異なるかどうかについては不明な点がありました。この問題をより深く理解するために、研究者たちは内因性の概日リズムシステムと睡眠/覚醒および食事/断食サイクルの影響を分離する実験を設計しました。この研究の核心は、異なる体重状態を持つ青少年が、内因性の概日リズムと行動周期の影響下でカロリー摂取のパターンに違いがあるかどうかを探ることです。
論文の出典
本研究は、Brown UniversityのMary A. Carskadon氏、Temple UniversityのChantelle N. Hart氏、University of TennesseeのHollie A. Raynor氏、そしてBrigham and Women’s HospitalのFrank A. J. L. Scheer氏など、複数の機関の研究者たちによって共同で行われました。この論文は2025年2月18日に『PNAS』(Proceedings of the National Academy of Sciences)誌に「Independent effects of the human circadian system and sleep/eating cycles on caloric intake in adolescents vary by weight status」というタイトルで発表されました。
研究の流れ
研究対象とグループ分け
研究では、12歳から17歳までの青少年51名(健康体重24名、過体重13名、肥満14名)を募集し、BMIパーセンタイルに基づいて三つのグループに分けられました:健康体重(HW)、過体重(OW)、肥満(O)。すべての参加者は睡眠障害、医学的または心理的な問題がなく、過去2か月以内に2つ以上のタイムゾーンを超えて旅行していないことが条件でした。
実験デザイン
研究では、「強制脱同期」(Forced Desynchrony, FD)プロトコルを採用し、内因性の概日リズムと行動・環境周期の影響を分離することを目指しました。参加者は自宅で14日間にわたり固定された睡眠時間(21:30~7:30)の安定期間を過ごした後、11日間にわたるラボでの研究に参加しました。ラボでは、参加者は7つの28時間の睡眠/覚醒サイクルに従い、そのうち17.5時間が覚醒期、10.5時間が睡眠期と設定されました。覚醒中は、概日リズムシステムへの影響を避けるため、6.58 luxという薄暗い光環境が維持されました。
カロリー摂取の測定
覚醒中、参加者は一定間隔で6回の食事を摂りました。各食事の前に、参加者は固定メニューから食事を選び、研究チームが提供する食物を計量し、摂取量を記録しました。食事前後の重量差を計算することで、各食事でのカロリー摂取量を求めました。さらに、参加者は食事前の空腹感や食事後の満足度に関するアンケートにも回答しました。
概日リズムの測定
唾液中のメラトニン濃度を測定することで、各参加者の内因性の概日リズム位相を決定しました。唾液サンプルは覚醒中に20~45分ごとに採取され、放射免疫測定法によりメラトニン濃度が測定され、これに基づき各参加者の概日リズム周期と位相が算出されました。
研究結果
内因性概日リズムがカロリー摂取に与える影響
研究の結果、すべての参加者のカロリー摂取が内因性の概日リズムに有意に影響を受けていることが明らかになりました。カロリー摂取は概日リズムの朝に最低となり、午後遅くにピークを迎えます。具体的には、カロリー摂取の概日リズムのピークは約17:30であり、成人の空腹感と食欲のピーク時刻(約19:50)よりも若干早めでした。
体重状態による概日リズム影響の差異
過体重および肥満の青少年は、概日リズムの後半に多くのカロリーを摂取しており、その概日リズムの振幅(ピークと谷値の差)は健康体重の青少年と比較して著しく低くなっていました。これは、過体重および肥満の青少年において、概日リズムがカロリー摂取に対する調整能力が弱まっていることを示しています。
行動周期がカロリー摂取に与える影響
すべての参加者のカロリー摂取は覚醒中に徐々に減少し、最初の食事が最も多く、最後の食事が最も少なくなりました。しかし、肥満の青少年では、覚醒中のカロリー摂取分布がより均一であり、最初の食事での摂取量が少なく、最後の食事での摂取量が多くなっていました。
研究結論
本研究は、内因性の概日リズムシステムが青少年のカロリー摂取に独立して影響を与えることを初めて直接的に証明し、その影響が体重状態によって異なることも明らかにしました。過体重および肥満の青少年は、概日リズムの後半に多くのカロリーを摂取しており、概日リズムがカロリー摂取に対する調整作用が弱まっています。この発見は、肥満の生理学的メカニズムを理解する新たな視点を提供し、今後の介入戦略に科学的根拠をもたらします。
研究のハイライト
- 革新的な実験デザイン:研究では強制脱同期プロトコルを採用し、内因性の概日リズムと行動周期がカロリー摂取に与える影響を成功裏に分離しました。
- 体重状態による差異:過体重および肥満の青少年における概日リズムによるカロリー摂取調節の特異性が初めて明らかにされました。
- 応用価値:本研究の結果は、肥満の青少年に対する個別化された食事介入戦略を策定する上で重要な根拠を提供します。
その他の価値ある情報
研究では、食事前の空腹感や食事後の満足度も概日リズムの影響を受け、この影響は過体重および肥満の青少年でより顕著であることがわかりました。また、研究チームは詳細な食品栄養データベースを開発し、カロリー摂取測定の正確性を確保しました。
この研究を通じて、私たちは概日リズムとカロリー摂取の関係についての理解を深めただけでなく、今後の肥満介入研究に新たな方向性を提供しました。