IDH野生型GBMにおける分子マージンを伴う根治的外科切除は生存期間の延長と関連する

この神経腫瘍学の学術論文において、研究者は変異型異型クエン酸脱水素酶(IDH wildtype)の悪性神経膠腫(GBM)患者における、術後の腫瘍細胞の切除断端残存量と無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)との関係を検討しました。 生存曲線

著者らはマサチューセッツ総合病院の神経外科、病理学、放射線科などから構成されており、この論文は2023年に発表されました。

研究手順の主な部分は以下の通りです。

a) 後ろ向きデータから予測モデルを構築し、手術前の患者特性(腫瘍体積、嚢胞性成分、脳室との接触、多発性、腫瘍位置など)を評価することで、患者が4.9cc未満の小残存体積の根治的切除を受けられるかどうかを予測しました。このモデルのAUCは0.83、感度62%、特異度90%でした。

b) 44例のGBM患者の手術検体を前向きに収集し、切除断端部からサンプルを採取して定量PCR法によりTERTプロモーター変異のアレル頻度を検出し、切除断端部の腫瘍細胞残存状況を評価しました。

c) 結果として、残存体積4.9cc未満の完全切除とされた29例のうち、7例で切除断端にTERT変異が検出されませんでした(腫瘍細胞残存なし)。このうち5例は完全切除(残存体積<1cc)でした。この5例の30カ月無増悪生存率は75%でしたが、腫瘍細胞残存があった症例では0%(p=0.02)でした。全生存期間も延長傾向にありました(75% vs 40%、p=0.19)。

研究の結論として、一部のGBM患者において、腫瘍切除と同時に「分子的断端陰性」(腫瘍細胞残存なし)を達成することで、術後無増悪生存期間が大幅に延長する可能性があり、この「超大切除」戦略が特定の集団に恩恵をもたらす可能性が示唆されました。腫瘍断端の分子シグナルを評価することで、手術効果を最適化し、臨床試験への適格基準を提供できると考えられます。

この研究の革新的な点は、術中にTERT変異を迅速に検出する方法を開発し、切除断端の腫瘍細胞残存状況を評価して「超大切除」の程度を導くことができる点にあります。また、術後の転帰を比較することで、切除断端に腫瘍細胞残存がない患者の予後が良好であることを初めて発見し、手術戦略の最適化に対する分子レベルの根拠を提供しました。