小児急性横断性脊髄炎例における星型細胞結合抗体によって誘発される星型細胞ストレス応答

小児急性横断性脊髄炎におけるB細胞反応

急性横断性脊髄炎(ATM)は、自己免疫性の脊髄炎で、年間100万人の小児あたり1.7~2例の発症率があります。ATMは通常、四肢の脱力、感覚喪失、および膀胱/腸の機能障害を特徴とし、その症状は数時間から数日以内に急速に進行します。磁気共鳴画像(MRI)はATMの診断の主要なツールですが、髄液(CSF)のタンパク質と細胞数において20~50%の症例が正常であることもあります。ATMは小児における初発の獲得性脱髄症候群(ADS)症例の20~30%を占め、多発性硬化症(MS)、神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)、または抗ミエリンオリゴデンドロサイト糖蛋白抗体関連疾患(MOGAD)の初発症状として現れることがあります。

研究背景と目的

成人と比較して、小児ATM患者における多発性硬化症の発症率は低いです。疫学研究によれば、成人ATM患者の約3分の1が最終的にMSと診断される一方で、小児ATM患者の22%のみがMSに進展します。さらに、成人と比べて、小児は急性免疫療法(ステロイド、IVIG、血漿交換など)後、通常2週間以内に改善し、約半数が2年以内に完全に回復します。

中枢神経系(CNS)の自己免疫疾患の発症メカニズムにおいて、特に多発性硬化症において、B細胞の役割は非常に重要です。しかし、現在のところ小児ATMにおけるB細胞の理解は乏しいです。著者の以前の研究では、抗体を最初に生成するB細胞亜型である形質母細胞(PB)が成人ATM患者で増加し、ニューロンに対する自己反応性抗体を生成することが示されました。本研究の目的は、小児ATM患者におけるPBの頻度、表現型、免疫グロブリン選択、およびB細胞受容体の反応性を調査し、疾患におけるB細胞の役割をより深く理解することです。

研究出典

本稿の著者チームにはChad Smith、Kiel M. Telesford、Sara G. M. Piccirilloらが含まれます。著者の所属機関はUT Southwestern Medical Center、J. Craig Venter Institute、University of New Mexico Health Sciences Centerなどです。本稿は2024年に『Journal of Neuroinflammation』誌に発表されました。

研究方法

研究チームは、5人の小児ATM患者と10人の健康対照(HC)のPB頻度と表現型を比較し、以前に報告された成人ATM患者のフローサイトメトリーデータと対比しました。研究者は血漿サンプルから総IgGを精製し、単一のPBから20種類の組換えヒト抗体(rhAbs)をクローン化しました。これらの抗体のマウス脳や脊髄、そしてヒト初代アストロサイトにおける自己反応性を平均蛍光強度(MFI)で測定しました。また、アストロサイトのストレス反応とアポトーシス反応を測定し、これらの抗体がアストロサイトの健康に与える潜在的な影響を研究しました。

主な結果

  1. PBの頻度と表現型

小児ATM患者の末梢血におけるPBの頻度が低下していることが分かりました。血清IgGのEAE脊髄に対するニューロンの自己反応性は小児ATM患者とHCで類似していました。しかし、EAE脊髄において、小児ATM患者のアストロサイトに対するIgGの自己反応性が低下し、PBクローンの個々の抗体がアストロサイトに対する親和性が体細胞高変異の蓄積に依存していることが明らかになりました。

  1. 抗体の自己反応性

患者血清から精製したIgGのマウス脊髄におけるニューロンおよびアストロサイトへの結合強度は、特にEAE脊髄のアストロサイトで高い結合強度を示しました。これは、小児ATM患者の体内抗体が高い自己反応性を持ち、特定のタイプの神経炎症を引き起こす可能性があることを示唆しています。

  1. アストロサイトのストレス

これらの抗体に暴露されたヒト初代アストロサイトは増加したストレス反応を示しましたが、アポトーシスは示しませんでした。これは、これらの抗体がストレス反応を誘発することはあるが、致死には至らないことを示しています。さらなる研究がこれらの抗体が長期的に細胞に慢性的なダメージを与えるかどうかを明らかにする必要があります。

研究の結論と意義

本研究は、小児ATM患者と健康対照におけるPB頻度、IgG自己反応性、および免疫遺伝学的特徴の違いを明らかにしました。これらの発見は、小児ATMの病理メカニズムの理解を深め、将来的な治療戦略に新たな方向性を提供する可能性があります。

  1. 科学的価値

本研究は、小児ATM患者と健康対照における体液性免疫反応の特徴を初めて明らかにし、CNS疾患における小児免疫システムの役割を理解する上で重要な意味を持ちます。

  1. 応用の展望

研究は、PBの拡大に対する治療がこれらの抗体によるさらなる神経損傷の抑制に役立つ可能性があることを示唆しています。これにより、小児ATM患者の長期的な疾患リスクを低減するための、より正確な治療法の開発が臨床的に可能となります。

研究のハイライト

  • アストロサイト結合抗体の特異性の発見:研究は、抗体のアストロサイトへの結合力が体細胞高変異の蓄積に依存することを明らかにし、今後の研究に新たな方向性を提供します。
  • 細胞ストレス応答のメカニズム:特定の抗体に暴露された後のアストロサイトのストレス応答