初期治療後に持続的なMRI病変がある小児髄芽腫における病気の進行リスクを予測する代替マーカーとしての治療反応性

小児髄芽腫における一次治療後の持続性MRI病変の反応は、予後リスクを予測する代替指標となる可能性がある

髄芽腫は、小児の最も一般的な悪性中枢神経系腫瘍の1つですが、集学的治療概念の導入により患者の予後は大幅に改善されました。しかし、一部の患者では予後が依然として不良です。一次治療後に持続する残存病変(局所の残存腫瘍、持続する転移病巣、または不確かな成分の病変)が予後にどのような影響を与えるかは現時点では不明確です。そこで本研究は、持続する残存病変が予後に及ぼす影響を評価し、このような患者の生存に影響を与える危険因子を分析し、その上で診断作業と治療方針の総合的評価を行うことを目的としています。

研究の発表元

本研究は、Denise Obrecht-Sturm氏らドイツ、スイス、オーストリアの複数施設に所属する著者によって行われ、2023年にNeuro-Oncology誌に掲載されました。

研究方法

  1. 症例収集: 2000年1月1日から2019年12月31日までに、4歳以上で初回手術後の中央画像診断で持続する残存病変が確認された髄芽腫症例84例を対象とした。

  2. 治療方針: HIT2000試験プロトコルまたは国内ガイドラインに基づき、リスク層別化された術後化学療法と放射線療法が行われた。

  3. 治療効果評価: 中央画像診断で評価され、全体の最良治療効果に基づき、部分寛解(PR)群と安定病変(SD)群に分けられた。残存病変の部位により、局所残存(R+/M0)群、遠隔転移(R0/M+)群、両者併存(R+/M+)群の3群に分類された。

  4. 観察期間: 中央値6年で、術後無増悪生存期間(pPFS)と全生存期間(OS)が評価された。

  5. 分子分類: 58例でDNAメチル化プロファイリングが行われた。

主な結果

  1. 全体の治療効果と予後が関連: PR群はSD群に比べ、5年pPFS(62.5%対35.9%、P=0.03)と5年OS(79.7%対55.5%、P=0.04)がいずれも優れていた。

  2. 残存病変の範囲と予後が関連: R+/M+群の5年pPFS(22.9%)はR+/M0群(72.4%、P=0.03)に比べ有意に低かった。

  3. 髄膜転移の種類が予後に影響: 脊髄髄膜転移例では予後不良(5年pPFS 39.0%、P=0.03、5年OS 55.3%、P=0.04)。

  4. 分子分類と予後に有意な関連は認められなかった(P=0.08)。

  5. 術後追加治療は予後改善に寄与しなかった(P>0.5)。

研究の意義

本研究により、一次治療後の全体的な治療反応、残存病変の範囲と種類が、髄芽腫患児の予後を予測する代替指標となり得ることが示唆されました。局所残存病変のみの症例では、追加治療は効果がないようです。したがって、追加治療の適用を検討する際には、治療反応、残存病変の状況、その他の診断情報を総合的に勘案する必要があります。本研究結果は、過剰あるいは不足の治療を避け、このような患者をより適切に管理するのに役立つでしょう。