LGR4を標的とした大腸がんにおける鉄死の標的活性化が獲得薬剤耐性を克服

遺伝的癌性耐性に対するLGR4標的化による克服

研究背景: 獲得性の薬物耐性は、がん治療の主な障壁であり、がん死亡の主な原因でもあります。しかし、耐性メカニズムはさまざまであり、耐性がん細胞に特異的に対処することは、依然として大きな臨床的課題です。Wnt経路の活性化は、がん幹細胞の存在を維持し、化学療法耐性を誘導できるため、Wnt経路を標的とすることは、腫瘍の耐性を克服する有望な戦略と考えられています。

研究者と発表状況: この研究は、南開大学のChen Quan教授の研究グループによって行われ、論文は2024年4月号の「ネイチャー・キャンサー」誌に掲載されました。論文の連絡著者は、南開大学のChen Quan教授、中国科学院動物研究所のDu Lei研究員、そして南開大学のHu Gang教授です。

研究の流れ: 1) 研究者は、22例の大腸直腸癌患者由来の腫瘍幹細胞株ライブラリを確立し、低用量の化学療法薬に繰り返し曝露することで、一部の腫瘍幹細胞株に耐性表現型を誘導しました。

2) トランスクリプトーム解析により、獲得性耐性腫瘍幹細胞株ではWnt経路の鍵タンパク質LGR4が顕著に上昇していることが分かりました。さらなる実験により、LGR4陽性腫瘍細胞が化学療法により耐性であることが確認されました。

3) 研究者らは活性スクリーニングを利用して、LGR4を特異的に標的とするモノクローナル抗体(LGR4-mAb)を開発しました。

4) LGR4-mAbはLGR4-Wnt経路活性を阻害し、腫瘍幹細胞株およびin vivoの腫瘍モデルにおいて、化学療法薬による鉄死誘導を増強しました。

5) 機構研究により、LGR4-Wnt経路は転写を活性化して鉄死抑制因子SLC7A11の発現を誘導し、鉄死を阻害することが明らかになりました。LGR4-mAbはSLC7A11の発現を低下させ、腫瘍細胞の化学療法薬に対する鉄死感受性を回復させました。

6) 腫瘍幹細胞株およびマウス腫瘍モデルにおいて、LGR4-mAbと化学療法薬の併用は、著しく抗腫瘍効果を増強し、獲得性耐性を効果的に克服しました。

研究の意義: 1) LGR4-Wnt経路が獲得性腫瘍耐性において重要な役割を果たし、鉄死を制御する分子機構を明らかにしました。

2) LGR4を標的とする初のモノクローナル抗体を開発し、腫瘍耐性を克服する新たな治療法を提供しました。

3) 前臨床データは、LGR4-mAbと従来の化学療法の併用を、再発または耐性患者の治療における臨床試験に進めることを支持しています。

4) この研究は、Wnt/鉄死経路を標的とするさらなる新規抗がん剤の設計の基礎を築きました。

この独創的な研究は、腫瘍細胞の獲得性耐性の分子機構を深く解明するだけでなく、臨床応用が期待される全く新しい標的治療戦略を開発し、将来的な腫瘍の再発と耐性の克服に新たな展望をもたらすものです。