TREM2欠損が腸マクロファージと微生物群を再プログラムして抗PD-1腫瘍免疫療法を強化
TREM2欠損による腸管マクロファージと微生物叢の再構築による抗PD-1腫瘍免疫療法の強化
ワシントン大学医学校の研究チーム、ブランダ・ディ・ルッチアなど複数の科学者が率いるグループは、先ごろ「Science Immunology」誌に研究論文を発表し、腸管微生物叢および腫瘍関連マクロファージがどのように抗PD-1免疫チェックポイント阻害治療に影響を与えるかを明らかにしました。この研究は、マクロファージ上のトリガーレセプターTREM2をブロックまたは削除することで、体内の抗腫瘍T細胞応答を強化することができることを確認し、TREM2欠損マウスでは抗PD-1治療後、腸管マクロファージが炎症促進状態に転じ、腸管微生物叢内のルミノコッカス属細菌(Ruminococcus gnavus)が増加することを明らかにしました。
研究背景
免疫チェックポイント阻害剤(CPIs)はPD-1、PD-L1、CTLA-4などのタンパク質をブロックすることで多くの癌の治療に成功を収めていますが、依然として多くの患者が持続的な反応を示さず、再発することがあります。CPIsの効果を高めるために、研究者たちは補助治療の戦略を探索し始めています。同時に腸管微生物叢が腫瘍免疫療法に与える影響にも注目が集まっています。
研究発見
研究は、TREM2の欠如がマウスの腸管マクロファージを炎症促進状態に移行させ、腸管微生物叢においてルミノコッカス属細菌が増加することを示しました。野生型マウスと比較して、TREM2欠損マウスは抗PD-1治療後に腫瘍制御能力がより強化されました。この効果は、野生型マウスにルミノコッカス属細菌を灌胃することで再現でき、R.gnavusが抗PD-1応答性を高める可能性のあるプロバイオティクス剤となり得ることを示しています。細胞因子解析では、TREM2欠損マウスにおいて、炎症促進腸管環境に一致しているTNFα産生CD4+T細胞の数が多いことが示され、これらの細胞が腫瘍領域に移動し、腫瘍成長の制御を改善する可能性があります。
研究の意義
この研究は、腸管微生物叢および宿主の免疫環境がどのように協力して腫瘍免疫療法の反応を調節するかについての理解を深めました。特に、特定の菌株を調節することで補助治療の戦略となる可能性が示され、臨床試験の理論的根拠を提供しています。
研究方法とプロセス
研究チームは、野生型およびTREM2欠損マウスにMCA/1956肉腫細胞を接種し、抗PD-1治療の反応を分析し、共養および分離条件下で対照実験を行いました。灌胃実験および異なる抗生物質の適用により、腸管微生物が抗PD-1治療反応に及ぼす影響を特定しました。
研究の結論
TREM2は抗PD-1治療の応答を調節する上で重要な役割を果たし、その欠失により炎症促進腸管マクロファージおよび特定の微生物叢の増加を通じて腫瘍免疫療法を強化できます。今後の研究は、これらの細胞および分子の相互作用をより深く理解し、これらの発見を臨床的にどのように利用するかに焦点を当て、治療効果を向上させる方向に進む可能性があります。